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| 前回はもっとも身近にいる生物ということで“鳥”がテーマでした。第2弾は“カメ”の登場です。鳥=鶴とカメで縁起もいいんじゃないかしら。のっそり、もっそり、それでいて案外身近にいるカメを見に行きましょう。 | 
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ホノルル動物園で競って餌を食べるカメたち「鶴は千年、亀は万年」といわれ、日本では昔から長寿の動物として親しまれてきました。
 神社などを訪ねたときに、欄間や柱にカメが彫り込まれているのはよく目にします。
 
 実際に万年生きることはないでしょうが、現在見られるカメと同じように甲羅をもったカメの祖先は、約2億1000万年前の地層から発見されているそうです。
 
 どれだけ昔から地球にいたのでしょう。あの一見どんよりと見える瞳で、代々にわたり地球の移り変わりを見てきたのでしょうか。
 
 日本にはカメを長寿のシンボルとして敬ってきた歴史があります。一方で、「すっぽん料理」を精がつくとして食用してきました。
 
   ハワイの暑い環境でもサイは元気です世界に目を移せば、カメはさまざまなことに利用されています。タイマイの甲板は“べっこう”の原料とされました。
 紳士がべっこう縁のメガネをかける……なんておしゃれは30、40年前には当たり前のことだったのです。
 
 さらに、大航海時代には保存食としてカメは重宝されました。
 
 船のデッキに放っておいても死なない。餌をあげなくても大丈夫。航海中に食糧が減少し、食べ物がなくなったらパクリ。
 
 なんとも便利な生物だったようで、このおかげでガラパゴス諸島のゾウガメは乱獲されました。
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|   この大ガメが芝をむしゃむしゃ食べ続けていました先日、仕事でハワイに行ってきました。 
 人気のパンケーキやハンバーガーショップ、さらに最近ハワイで流行っているベトナム料理店をめぐるという恵まれた仕事でした。
 
 その合間にホノルル動物園に行きました。
 
 太平洋のど真ん中にあるオアフ島の小さな動物園には、ゾウもトラもサイもいましたが、最大の見ものはゾウガメとコモド大トカゲでした。
 
 4月だというのにビーチにサーファーがあふれているような気温ですから、残念ながらコモド大トカゲは木の下でじっとしており、あまり見られませんでした。
 
 しかし、ゾウガメは元気です。赤土の上にある小さな餌を競って食べています。
 
 さらに、奥にいた一番大きなゾウガメは、一面に生えた芝をむしゃむしゃ。
 
   関係ないですが、ハワイで人気のパンケーキですもう、次から次へもぐもぐ。
 ぐぐっと口を芝に突っ込み、ぐいっと首をひねって芝をちぎり、むしゃむしゃと食べるのです。それはみごとな威厳ぶりでした。
 
 動作がのろいのに、観ていて飽きない。足などは動かさないのに顔は俊敏に動いて芝をかじる。カメっておもしろい……が実感でした。
 
 あのユーモラスさが、おとぎ話の「浦島太郎」などで生きているのですね。
 
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神社の池にはカメが行列状態東京の下町情緒が残る木場に私は住んでいます。その名の通り、江戸時代は木材を集め、それを扱う材木商が店を開いた場所です。
 
 お隣の町、門前仲町や木場あたりの“深川”と呼ばれる一帯にはお寺や神社も数多く点在しています。
 
 駅から私の住むマンションのあいだに小さな神社があるのですが、そこの池にはたくさんのカメが棲んでいます。
 
 月が出ていない暗い夜でした。私の靴にコツンと当たるものがありました。
 小さな石が敷かれた境内は、熊手でいつもきちんと整備されています。足に当たるものなんてないはずなのに……。
 
 それが池から抜け出して、おろおろ歩いているカメでした。
 主人に言って、カメをよっこらしょと持ち上げて池に戻しました。甲羅の直径が20センチぐらい。案外、大きなカメでした。
 
 それ以降、お寺や神社に行くたびに池を覗き込むクセがついてしまいました。すると、いるいるカメさんが。カメは身近に生きていました。
 
   海に向かう赤ちゃんガメ。どれくらいが生き延びたのでしょうかさて、カメの最後のお話は産卵とそのふ化についてです。
 日本の海環境のいい砂浜には、今でも海ガメが産卵のためにあがってきます。地元の人々も海ガメを大切に見守り、浜をきれいに保っています。
 
 数年前の夏、高知県で海ガメのふ化に立ち会いました。産卵後の卵を砂から取り出し、人々の手によって大事に育て、ふ化をすると再び砂浜に帰すのです。
 
 海ガメの赤ちゃんは海の匂いを感じるのか、小さな体で海をめざします。その様子を人々が見守ります。人々がまわりにいると、海ガメの赤ちゃんを狙うカラスなどが寄って来ないので、よちよち歩きでも海までたどりつけるのです。
 
 しかし、海に入ってからは自分の力で生きるしかありません。大きくなれるのはほんのひとにぎり。だからこそ、海ガメあかちゃんは全力で大海をめざします。
 
 何年後も、何十年後も、長寿のカメがずっと日本の海に帰って来てくれるといいですよね。
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< PROFILE >
石井 喜代美
ご主人がアウトドア・旅行雑誌の編集者をしており、その関係で国内外の旅に同行。ブランドショップより地元の市場、高級レストランより庶民の味、そして動物園と水族館には必ず行く主義だとか。キャンプや温泉にも詳しい。